エスケイワード品質を守る翻訳チェッカーの仕事とは

入社して知った、翻訳チェッカー業務

エスケイワードでは自治体や官公庁などの公的組織や、多様な業種の企業様から、幅広いジャンルに及ぶ多言語案件のご依頼を受け、いわゆる「翻訳」だけでなく、すでに翻訳されたものの「精査(ネイティブによるチェック)」、テーマを頂いての「キャッチコピー」制作、より自由度の高い「ライティング」など、言語に関する多岐にわたるご相談を頂き、ご依頼者様と協働的に、日々より良い多言語成果物の制作に努めています。

その中でもご相談の中心となるのはやはり翻訳となりますが、翻訳といえば「翻訳者」が行うもので、翻訳会社となれば「翻訳コーディネーター」がいるだろうということくらいしか知らなかった私が、「翻訳チェッカー」と呼ばれる縁の下の力持ちの存在を知ったのは、入社する少し前のことでした。

自動翻訳では補いきれないプロのお仕事には訳がある

いまやパソコンやスマホから、インターネットを通じてだれもが無料の自動翻訳ツールを利用できるほか、多種多様な翻訳専門の機器もあり、機械翻訳はとても身近なものになりました。
言語の壁を超えるのは、昔に比べて格段にハードルが低くなっています。

旅行の際の情報入手や気になったネット上の情報をしらべるとき、これらのツールを使えばとても便利で、プロの通訳者や翻訳者が自分の手の中にいてくれるような安心感を抱くかもしれません。

普段の生活の中でそのようなツールを使い慣れてくると、仕事の面で事業展開上、多言語を取り扱う必要が見えてきたとき、ふとこんな疑問が生まれてくるかもしれません。

「ある言語」から「別の言語」を生み出すプロがいるのは知っている。だが、そこにお金と時間を費やす意義はあるのだろうか

翻訳ツールを使ってワンクリックで出来る訳文と、それなりに費用を必要とする、プロから生まれる訳文は何が違うのか。
また、必要な原語のネイティブが身近にいる場合、その方に「翻訳してもらう」のと、弊社のような業者にご依頼いただく場合と成果物にどのような差が出てくるのか。

だれもが想像できるところでしょうが、ひとつには翻訳者の存在です。
翻訳とは原文の意図を踏まえて、訳語で新たに内容を構築するきわめて創造的な営みです。
単に原語の「語」や「文法」を知っていて「わかる」なら「訳せる」かもしれませんが、それが訳語になった時に謎の内容が出来上がる可能性があります。不可思議な機械翻訳を皆さんも見たことがおありでしょうか。

原語原文の持つ価値を等価に別原語で表現するには、原語の属する社会での暗黙の了解なども知見として、文脈を読み解く能力が必要です。
また、訳語の高い運用能力や、クライアントの見込むエンドユーザーに訴求する表現能力も要求される専門業務
として、翻訳者というプロが職業として確立されてきました。

ちなみに弊社では翻訳成果物に携わるのは、実は翻訳者だけでありません。最終的にクライアント様に納品物を提出する窓口となる翻訳コーディネーターも要所で原稿のチェックに入ります。では、あまり多くの人には知られていない「翻訳チェッカー」は何をしているのでしょうか。

翻訳チェッカーの働き

「翻訳チェッカー」は会社により、「校正者」「レビュアー」「第三者チェック者」などとも呼ばれる、翻訳者とも、翻訳コーディネーターとも違う職掌の、いわば「品質の番人」です。

エスケイワードではネイティブ翻訳者による翻訳を標榜しています。
そのため成果物はその言語を母語とする者の吟味された表現により読みやすく自然な訳文をお作りできます。

しかし、原語と訳語の間に立って、その差異を乗り越えながら翻訳物を構築する際には、成果物にどうしても次のような欠陥が生じる場合があります。これらの多くはおそらく翻訳者が訳語に対してネイティブであっても、そうでなくても起こりうるものでしょうが、日英翻訳チェッカーとしてネイティブ翻訳者を見た限りで気づいたところは

<翻訳チェッカーの気づき>

(1) 単純な単語のスペルミス

(2) 数字などの表記ミス、ピリオド落ち、不要なスペースなどのミス

(3) 見落としによる訳のヌケ

(4) 品詞の使用ミス、動詞の単複の取り違え等文法ミス

(5) 各種記号の体裁の不一致

(6) 語彙の一貫性のなさ(一つの語に対し複数訳語がある「揺れ」)

(7) 原語を過度にわかりやすくしようと説明的になる行き過ぎた訳文

(8) 原語の真意を把握しかね翻訳必要部分を省略した訳の不足

(9) 原語の誤認、原語内容の理解不足による誤訳

(10) 原語の構造を把握できなかったことによる誤訳

(11) 日英翻訳での漢字の誤認や読違いによる地名、固有名詞の表記ミス

他にもありますが、少なくともこれらがミスの主なものです。

仮に、ネイティブ翻訳者とクライアントのみでのやり取りだったとしたら、これらは修正されないまま納品になる可能性が高くなります。特に(7)~(11)に関しては相当の能力と経験、知見のある翻訳者でも自身では気づけない、ということがあります。

コーディネーターにも得意原語はありますが、納期/費用管理、クライアントや翻訳者とのコミュニケーションを中心とする業務の中で、お預かりする多言語案件のすべての言語に同じ精度でチェックを入れることは難しいため、翻訳後に原稿を校正校閲を専門とする翻訳チェッカーに回し、前述したような問題がないか、いわば品質検査を行うのです。

原語に対して非ネイティブだから難しいところ

興味深い間違い

英語への翻訳はもちろん経験豊富な欧米豪州出身の翻訳者が行いますが、翻訳チェッカーとして日英翻訳を日々見ていると、どんなに優秀でも原語(日本語)に対しては非ネイティブだから起きる、とても興味深い間違いに出くわすことがあります。

「木へんの漢字」

ちょっとした間違いとして、ある施設の一部の漢字「」に「Hinoki」とありました。おもしろいですね。たいていの日本人には「楠」と「檜」は全く違うものとして認識されているでしょうが、漢字は西洋言語の使い手には難易度が高い。恐らく混同してそのまま提出してきたのでしょう。

「御三家」

ある徳川家のお宝を紹介した案件で「御三家」が出てきたことがあります。これはこの文脈なら日本人であれば「徳川御三家」と書いてなくとも「尾張・紀伊・水戸のね」とわかりますが、おそらくそれとはわからず単に「three great families」としてきました。これは「訳」にはなっていますが、これだけではおそらく読み手には(よほどの知識がなければ)文脈上必要な「徳川将軍家」を支える「徳川御三家」とはわかってもらえないでしょう。そのため翻訳者に修正を依頼しました。

「腰に手ぬぐいをぶら下げて」

こんなこともありました。ある人物紹介の翻訳案件で「腰に手ぬぐいをぶら下げて近所の居酒屋に行くような人」という文章がありました。
翻訳者から「腰に手ぬぐいをぶら下げる」の理解が難しいとコメントが付いた状態で翻訳原稿が上がってきました。
なぜか?
「腰」は「首」のようにはタオルをひっかけられないからです。どうやってぶら下げる?というわけです。たぶん多くの日本人は、現場で力仕事をするような人がズボンのベルトなんかにちょっとタオルを下げる姿はなぜか想像できますし(実際には見たことがなくても)、「近所の居酒屋」にそのまま行く姿も絵が浮かびます。でもその「絵」は実は世界共通ではなく、私たちが生まれ育った文化の中で思わず知らず学びとってきた部分なのです。そしてこのような表現が「庶民的で気取らない人物像」となりうるということもまた、日本文化ならではの「行間の解釈」であり、はっきりとそう書いてあってさえ、なぜそういうことになるのかネイティブには読み切れない場合があるのです。

原語に寄り添う修正を提案し、翻訳者に投げ返すという取っ組み合い

エスケイワードの日英翻訳者たちは、大変な勉強家で経験豊富で、どんなに構造の複雑な長文も果敢に訳してきますが、それでも意外とこのような点が手ごわいのです。そういったいわばネイティブ翻訳者からすれば「トラップ」のような日本的表現へのつまずきも見逃さず、訳語の良さを壊さないようにしながら、原語に寄り添う修正を提案し、翻訳者に投げ返す(フィードバック)ことで、より精度の高い成果物へと仕上げていくのが日本人の翻訳チェッカーなわけです。

こうしてみると日々厄介な表現と取っ組み合っているようですが、実際には言語の差で「そんなことか」というところに意外と時間を取られていたりします。

日英あるあるは「単数複数」の扱いをどうするか

最近ではある神社の参道に「燈籠があり」という日本文に対して英語での翻訳は「一つの燈籠」と訳されてきたのですが、、「いや、神社の参道ってよく左右に燈籠がある」と思い、熱に浮かされたように調べまくり一般の方のブログからなんとかその神社の参道写真を発見し、「複数」だと確認でき安堵しましたがこの恐怖は日々ついて回ります。

祭りでお猿が来る」とあれば、「え、これはいわゆる猿回しでいいよね?一匹だよね?」と思いつつも必死で過去の写真など探し、
同僚と行った」と書いてあれば、「え、一人?二人?何人の同僚なのかも言って~!」と心で叫ぶ。

日英翻訳の生まれる現場では日本語の「単複」に対する曖昧さに誰もがどこかで苦しめられているのです。

まとめ

エスケイワードが翻訳ご依頼案件に頂戴する費用とお時間には、ネイティブ翻訳者への「丸投げ」品ではなく、コーディネーターによる元原稿の整理点検、適正なお見積もり、案件にふさわしい選ばれたネイティブ翻訳者による自然な翻訳、翻訳チェッカーの精読による校正校閲(翻訳チェック)、更にネイティブ翻訳者の修正(フィードバック)と、コーディネーターによる最終確認(ポイントチェックと納品形態への編集、申し送り事項の整理)と納期を厳守した正確な納品が含まれます。

▼コーディネーターによる元原稿の整理点検、適正なお見積もり

▼案件にふさわしい選ばれたネイティブ翻訳者による自然な翻訳

▼翻訳チェッカーの精読による校正校閲

▼ネイティブ翻訳者による修正

▼コーディネーターによる最終確認
(ポイントチェック / 納品形態への編集 / 申し送り事項整理など)

▼コーディネーターによる納期厳守のスケジュール管理と正確な納品物

あらゆるニーズもお聞かせください。ヒアリングしてお客様への要求にお答えいたします。
結果として成果物は頂戴した原稿をただ「訳した文」ではなく、クライアント様の想定するエンドユーザーを意識したエスケイワード品質の「製品」となってお渡しに至ります

そして…「コレジャナイ」があれば修正にもご対応いたします!

ぜひ一度、エスケイワードへのご依頼をご検討ください。

エスケイワードの翻訳・多言語Webサイト制作サービス