私とアーカイブ(その2)

エスケイワードでアーカイブ事業を統括している矢野と申します。
私がコーポレートアーカイブ事業を始めることになった経緯を前後編でお伝えしています。

前編では、鉄道検査資料の整理が私とアーカイブとの最初の出会いであることを述べました。
今回は資料整理業務がどのように現在のアーカイブ業務へと展開していったのかを説明したいと思います。

資料を調査せよ

鉄道検査資料の整理をはじめ、初期の資料整理業務は文書資料の配架場所をリスト化(目録作成)することが業務の中心でしたが、様々な業界業種の資料整理を進めていくうちにアーカイブ業務の原型となる業務に出会うことになりました。

某繊維機械企業から「業界関係者から古い織物の生地片を寄贈されたもののいつの時代のものでどの地方の織物かわからないので、作成年代と作成地方を調査推定して受入れ台帳を作ってほしい」との業務依頼が舞い込んだのです。

資料にも色々ある

前述の鉄道検査資料の整理業務などでは、基本的に資料の表紙を見れば整理に必要な情報(構造物名、作成年など)が取得できるものが主でした。
しかし、この時に寄贈されたものは生地片だけで、説明書きなどは一切ありません。

この業務を通して、資料とは紙に書かれた文書資料だけではなく、色々な状態や形態があることを知りました。

実は企業の資料には文書資料以外にも立体物 (製品や道具など)や写真など、テキスト情報にするのが難しい資料も多く、どのように情報を取得(資料調査)するかが重要になってくるのです。

この生地片の一件は、織物を研究している先生の協力を得て生地模様の特徴から資料を推定、分類することで台帳化することができました。
資料の情報をどのように取得するかを検討し手順書化した上で、資料について自ら調査し分類したという点で、歴史学の知見(学芸員的知見も含む)を活かすことのできた業務として大変思い出深い案件です。

企業は資料を残している

鉄道検査資料の整理と生地片の調査、これら2つの業務が私とアーカイブの出会いを語るうえで欠かせない案件となるのですが、色々な企業の資料整理をしてきたことで改めて気づいたことがあります。

それは、企業は色々な資料を残しているということです。
しかもそれは検査資料のような業務に関わる資料の他に、歴史的資料も意外に多く残しているという気づきです。

ここでいう歴史的資料とは、企業の創業時に関わる資料や過去に発表した製品に関わる資料、かつて開催されたイベントや行事に関する資料など多種にわたりますが、つまり「会社がどんなことをやってきたかが分かる資料」のことです。

歴史的資料の整理と活用

企業が自社の歴史的資料を残しているということは、各企業が(意識、無意識に関わらず)歴史的資料を残す必要性があると感じているということです。

一方で、せっかく歴史的資料が残してあるのに、整理ができていない、あるいは活用できていないという実状も各企業のヒアリングから見えてきました。

この実状を知るにつれて、この歴史的資料の整理活用方法を提案することができれば、継続的な事業にできるかもしれないと考えるようになりました。そして、企業内の歴史的資料の収集から調査・整理に加えて活用までの一連のサイクルを構築する「コーポレートアーカイブサービス」を構想したのです。

当初は私一人で始めたアーカイブ業務ですが、実績を積んでいくうちに相談をいただく内容もより高度により多様となり、現在はチームで対応する事業にまで発展させることができました。
これからも当初からの目標であった歴史学の知見を活用することで、日々新しいアーカイブ業務に取り組んで参ります。