今よりも「許容し合える世界」を目指して。ワークショップで叶えるチームビルディング

先日Connected Base “ASOVIVA”で開催された「アイデアを引き出すワークショップをつくるトレーニング in Nagoya」。これをはじめとして、数々のワークショップを各都市で展開している主催の栄前田勝太郎さん(有限会社リズムタイプ/株式会社デジタルステージ|デザインストラテジスト/CXO)。

なぜご自身活動拠点である東京だけでなく各都市で開催するのか。その想いに、自身もワークショップデザイナーであるエスケイワードCOO沢田が迫ります。

地方展開にかける想い

エスケイワード沢田(以下、沢田):最近様々なイベントやワークショップを地方で実施されていますが、自ら仕掛けて計画的に進めていっているのですか?

栄前田さん(以下、栄前田):計画的ですね。元々はあまり外に出ることを進んでやってはいなかったのですが、ディレクションの本を出したことをキッカケにイベント登壇の機会が増えていきました。初めはプロダクトやサービスデザインの改善といった方向で声がかかることが多かったのですが、実は課題はプロダクトそのものではなくそれをつくっていく人やチームにあったりすることもある。それに気づいてからはつくる人たちの支援を軸として持っています。

つくる人たちを支援するには、本やオンラインでの情報発信では足りないんです。実際にイベントやワークショップの場で一緒に対話し、考えることで、参加者が自分の組織に持ち帰って知識や情報を広げていくことができる。

東京でももちろん開催しているし取り組みは続けているのですが、自分が動いて場をつくることで、何かが動き出すキッカケになったらいいなという思いもあって、行ける都市には自ら行きたいなと考えて計画的に開催していってますね。

繋がらない街、名古屋…

沢田:名古屋では今回が二度目の登壇かと思いますが、名古屋という都市の印象はどうですか。

栄前田:繋がらない街…という印象を少し持っています。情報が閉じているというか。実際にイベントで来てみて参加者と話してみると、参加者たちからもそんな声が聞こえる。どうしてなんでしょうね。

沢田:文化的に強い産業が都市に根付いていることもあるかもしれないし、成功事例にうまく倣って2番手でやってきたというところもあるかもしれませんね。でも今の時代、そもそも1番の成功事例なんてなくなってきていますよね。

栄前田:なるほど。でもそんな土地だからこその上手なコミュニティ形成の方法がきっとありますよね。例えば、福岡や京都は、東京の仕事ももちろんしていたりするけれど、その土地の仕事とうまく関わり合わせていたりして、情報共有するためのコミュニティが機能している。

その土地ごとにフィットする場づくりがあると思うので、場のつくり方を伝えていきたいですね。少し気を遣ったり、視点を切り替えるだけで繋がっていくこともあると思うんです。そうやってコミュニティができていけば、名古屋から発信していけることはもっともっとあるんじゃないかと思います。

沢田:まさにASOVIVAは「Connected Base」なので、私たちもそこに力を注いでいきたいですね。

みんなが困っているチームビルディング

沢田:冒頭で「実は課題はプロダクトそのものではなくそれをつくっていく人やチームにある」と仰ってましたけど、福岡でイベントを開催されたときの反応はいかがでしたか?

栄前田:参加者が事業会社と制作会社で半々くらいだったのですが、事業会社の方々にとっては「チームビルディング」がわりと当たり前に浸透しているんですよね。だけど、制作会社の方々からはハテナがいっぱい出てくるんです。

話が前後しますが、ディレクションの本を出したときに制作会社のディレクターさんからたくさん相談されて、共通して「ディレクターつらい…」というのがあって。ディレクターだけが頑張るの止めようよ、って思ったんです。
そこからずっと言っているのが、プロジェクトマネジメントは「管理」じゃない、メンバーみんなで考えて進めていくものだって。その「みんなで考える」が「対話」になるんですけど、対話やチームビルディングといった言葉ばかりが先行しすぎて、耳にはするけど実際にはやり方が分からない。なので、デザイン、UX関連のイベントでも「人、チーム」を根底に置いた話で登壇しています。

チームって、仲良くなればいいわけではないですよね。メンバーみんな良い人で真面目で仲良くて、でもそれだけでチームになっているかと言ったら違う。
私は「”1か2を伝えれば、そこから3から4やってくれる”みたいに、すべてを伝えなくとも意思疎通できる」状態なのがチームだと思っていて。言ってることや意見が異なっても、根底にあるものが揃っていれば完全一致しなくてもすり合う部分がある。繋がっているというか。

これが「分かっているはずだよね」だと暗黙知なので良くないんです。「分かっているけど、察しているけど、違う意見も言える」状態がチーム。そこにはやっぱり安心・安全な関係も必要です。

でもそれは一朝一夕でできるものではないので、環境としての場が必要だったりもします。モニターに向かっている状態では言えないことも、いつも通りじゃない場所なら言える空気になるかもしれない。自分たちにフィットするものを見つけるトライ&エラーをしていく継続性もチームビルディングに必要だと思います。

あとは、やっぱり誰かが頑張りすぎないことは大事です。
私自身も依頼をもらって企業に入り込んでチームビルディングのお手伝いをすることがあるんですが、自分一人で頑張っても当然ダメなんです。言いたいことを伝えて、受け止めてもらって、相手にも考えてもらって、そうやって巻き込んで、賛同してくれる人を増やしていくことが大事ですね。

クライアントも一つのチームの仲間

沢田:以前プロジェクトのカイゼンをテーマに登壇されていたこともあったかと思いますが、それもチームの話だったんですか?

栄前田:あのときは「『こんなプロジェクトはいやだ!』をいいね!にするカイゼン」として話したのですが、制作会社の方々からプロジェクトでモヤッとしたことをどうクライアントに伝えたらいいのかと話題がありまして。確かに受発注の関係性があるなかで難しく感じることは理解できるんです。でも方法は全くないのかと言われたらそうではない。それをテーマとしたワークショップをしてみたなかで、対話・会話・議論の違いを言語化していって、実際に「対話」を体験してみてもらったんです。

「対話」をしていけば、クライアントにモヤッとしたことを伝えることもできる。そういったことができる関係性になればクライアントも含めて一つのプロジェクトチームになれたと言えますよね。

沢田:今回のイベントのテーマ「アイデア出し」もクライアントと一緒にやるシーンもありますよね。

栄前田:そうですよね。最近は「アイデア出し」をワークショップでやりたいという声もよく聞くんです。だけど、そもそも「ワークショップが何か」を分かっていないケースも多い。ミーティングやブレストとの違いが分からなかったり。せっかくイベントを開催するなら、実務の場でも活かしてもらえるものを伝えていきたいと思って、今回はそのアイデア出しからワークショップという場をつくってみるところまでをテーマにしています。

沢田:だからタイトルが「アイデアを引き出すワークショップをつくるトレーニング」とちょっと複雑なんですね(笑)。

栄前田:アイデア出しも、ワークショップデザインも、全部ひっくるめて体験できる一つのワークショップです(笑)。他の方がなかなかやらないようなことを自分がやろうと思っています

何でそれをつくるの?を問う

沢田:最近はSDGsやエシカルといった気になるキーワードのイベントも開催されていましたね。

※エシカル(ethical)とは、「倫理的」「道徳上」という意味の形容詞である。つまり、「法律などの縛りがなくても、みんなが正しい、公平だ、と思っていること」を示す。近年は、英語圏を中心に倫理的活動を「エシカル(ethical)○○○○」と表現し、エシカル「倫理的=環境保全や社会貢献」という意味合いが強くなっている。(Wikipediaより)

栄前田:気になるキーワードが似ているんですね(笑)。私はSDGsの話をするにも、自分が関わってきたサービスデザインの文脈で話しています。

「何でそれをつくるの?」を聞いていきたいんです。新しい何かをつくるということは、今より少し未来の世界に向けてつくるということ。じゃあその世界に対して自分たちはどうしたいの?を考えてほしいんです。例えば需要がありそうだからつくる、だったとすると、何かあったときにステークホルダーの意見に左右されてブレてしまうことがあるかもしれない。自分たちがどうしたいのかがちゃんとあって、それを言語化し、共有することで指針とすることができると考えています。

「エシカル」はつくる人たちに「本当にそれが必要なの?」を考えてほしくて、話題提供をしています。サービスを成長させていく手法グロースハックのなかに、フックモデルというのがあります。簡単に言うと、ハマってもらうためのトリガー(きっかけ)を用意することで、オンラインゲームなんかに使われたりして、依存性があるものです。収益性を考えてそういったものをつくろうとなってしまうことはあるのでしょうけど、それは本当に必要?それをつくることで、未来の世界にどういった影響があるか考えている?を問いたいんです。

新しいサービスやプロダクトを世に出すということは、少なからず世界に影響を与えるということです。その責任はオーナーにあるかもしれないけれど、エシカルの概念を知っていれば、つくっているデザイナーやエンジニアが違和感を抱くことができるかもしれない。そういった期待を込めて、サービスデザインの文脈でエシカルやSDGsの話をしていますね。

一貫しているのは、他人事ではなく自分事にしてほしいという想いです。
サービスやプロダクトデザインの支援をするときも、チームビルディングの支援をするときも、「理想=成し遂げたいことはこういうことだよね」を必ず言語化するようにしています。色んな制約がなかったら、本当はどうしたい?をみんなで考えてほしいんです。

自分たちが本当にどうしたいのかを考え、掲げるのがビジョン。現実ではそこに必ず行けるものではないかもしれないけど、ビジョンが無いとそもそも向かう方向が分からなくなってしまうんです。それを最初に掲げるのはリーダーや一部のステークホルダーなのかもしれませんが、一度つくったビジョンを問い直す、アップデートしていくのはチームみんなでやったほうがいいと思っています。そこをみんなでやらないとただのお飾りになってしまう。最初のビジョンに余白を持たせておいて、余白を埋めるのをみんなでやっていきましょう、という方法もありますね。

「今よりも許容し合える世界」をつくりたい

沢田:みんなで、チームで、というのが伺ったお話の中で一貫したキーワードだったかなと思うのですが、自ら動いて対話やチームビルディング、ワークショップを広げていくことを通じて栄前田さんが「つくりたい世界」を言語化するとどんな世界なのでしょうか。

栄前田:これもアップデートしていくものではありますが、「今よりも許容し合える世界」をつくりたいですね。人はそれぞれ違って、その考えの違いを知ることが私にとっては新しい発見だし学びになって、とても楽しみなことなんです。だけど、違いを認め合えずに「こうするべき」に捕らわれてしまう人たちもいて。「許容」という言葉がまだフィットしきっていないのですが、こうであるべき!がなくなって、違いやユルさが許される世界にしていきたいですね。違いがあるからこそ、どうしていく?を考えていきたい。

違いを受け入れられたり、そこからの考えを膨らませられるように、みんなに余白を持ってほしいんです。繰り返しになりますが、一人が頑張りすぎてもうまくいかない。こうしなければいけない、に捕らわれてしまってる人たちがたくさんいるように感じるので、もう少し力を抜いてほしいなと思っています。

沢田:弊社もそう…かもしれませんが、このエリアで同じようなことで悩んでいる人はたくさんいる気がしますね。そんな方々に勝太郎さんの話を聴いてもらうためにも、このエリアのコミュニティを広げていきたいですね。

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ご自身の経験から、サービスやプロダクトを「つくる人」の支援に焦点を当てて活動をされている栄前田さん。気になるキーワードがたくさん詰まったお話を伺うことができました。

私たちエスケイワードも、多様性を大事にしながらチームをつくり上げようと奮闘している「つくる人」の集団です。そのチームが自社だけに留まらず、名古屋エリアのコミュニティに広がっていけば、もっと楽しい未来が待っているのではないか。そんなワクワクを感じました。

 

今よりも許容し合えるワクワクする世界を目指して、名古屋エリアのコミュニティを一緒につくっていきたい!そんなお声をお待ちしています。